1 + 1 は 2 になる?

「1+1 は 2 になる」と言うが、これはなんだか 1 + 1 とう式が 2 という値に「変化する」ような印象を受ける。
考えてみれば、 1+1 が 2 に変化することを表現しようと思ったならば、1+1 と書いてあるところを消しゴムで消して 2 にしなくてはならない。
一方、1+1=2 という等式には、左辺と右辺が別々に存在していて、それが等しいと宣言している感じだ。そこには、変化を示唆するようなものは何もない。
比例なんてのも、小学校では片方が 2 倍になるともう片方も 2 倍に「なる」と説明されるが、ここにも変化の感覚が潜んでいる。これは生活上に算数を応用するとき、大変に有益な考え方ではあるが、比例そのものには、こうした「変化」を示唆するアイディアは含まれていないと思う。
中学高校生になると、この「変化」好きが実際に不便を引き起こし始める。x+100=300 という方程式を解くとき、x+100=300 を x=300-100 に「変形する」と言う。しかし、そこに時間的な先後を見て「変化」したような印象を抱くと、x+100=300 と x=300-100 の間にある必要十分という関係が見えてこないかもしれない。
万物は流転するとか、流れに浮かぶうたかたは…久しくとどまりたるためしなし、とかいうが、どうやら我々が変化というものに本質じみたものを感じるものらしい。代数を勉強するとき、この「変化」への執着を捨てなくてはいけないというのは、面白いことである。