普通の顔

幼稚園の頃、鏡を見て考えた。
「どうして自分は何の特徴もない普通の顔なのだろう? 目も、鼻も、口も、どこにも特徴がないではないか」
今から考えてみると、おかしくてたまらない。「普通の顔」の人などどこにもいないのに、どうしてそんなふうに思ったのだろう。当時の写真を見てみても、それはそれなりに特徴のある顔をしている。
簡単な話、すべてを自分を基準にするなら、自分の顔は普通の顔なのである。考えようによっては、「俺ってどうしてこう男前なんだろう」なんて言っているナルシストは、少なくとも自分の顔を基準にして世の中を見ていないという点で、「普通の顔」だった幼稚園児の私よりも謙虚なのかもしれない。
ただ、これを笑っていられるのは、事が顔のことだからである。これが政治思想ともなると、笑っているわけにはいきそうもない。「普通」はもって警戒せざるべからざるなり、というところだろう。