エジソンさんの泥団子

エジソンは子どもの頃、泥団子を 2 つ持ってきて合体させて、1+1 は 1 ではないかと言ったとか。さすが天才は発想が違うと感心はするが、あらたまって考えてみると、そこには数学の持つ重大な秘密が隠されているように思う。
ようするに数学はフィクションであるということだ。1+1 が 2 である事と、ミカンが 1 つあるところにもう 1 つ持ってくると 2 個になるという事は、元来関係のないことだろう。せいぜい、整数が持つ構造と同じものが、現実世界に発見しうるというに過ぎない。だから、この件で、あらかじめ「団子は合併するべからず」の規則を与えておかなければならぬというのは、数学の責任ではあるまい。
少なくとも建前の上では、数学は此の世の秩序を解き明かしたりなんかは全然していなくて、ただ巧妙な設定を持つ一大架空世界ということになっているのだと、私は理解している。もっとも、数学が「現実世界が数学世界と一致するのはたまたまだからねっ」的なツンデレになったのは、そう古い時代ことではなさそうではあるが。
とまれこのツンデレ風の建前に付き合ってやる寛容さがなければ、複素数などというものは理解し得ないものであって、エジソンが交流回路を理解し得なかったという噂も、彼が泥団子を捨てて空想世界の遊び人となることがなかっとするなら、宜なるかなというところである。